森下佳子

するとひとつだけ気付いたことがありましてね。一日雲を見ておろうが何をしておろうが、誰も何も言わねえんでさ。家も、銭も、知る人もねえ。けど、裏返しゃあ、俺がどこで何をしようとかまわねぇわけで。 これから先は、何にも誰にも縛られず、己の心に従って生きてやるのだと決めたんでさぁ。 (どこぞのお家なぞに縛られるわけにはいかぬということか) けど、気付いたら、仲間に縛られ、町に縛られ。ざまぁねえでさぁ。